黒部別山登頂 [登山]
好天が3日続くことを確認し、黒部別山再アタックを決行し登頂を果たしました。
内蔵助平に幕営2泊、ハシゴ谷乗越から薄い踏み跡を追い、山頂まで続く笹藪地獄を突破して、「マイナー12名山・黒部別山の山頂に立つことができました。
草地の黒部別山山頂から見る立山連峰の、富士の折立・真砂岳・別山方面。
3日間好天が続くことを確認し急遽決断しました。今回は前回の轍を踏まないよう山中2泊の幕営です。
9月8日<1日目>
幕営場所は水の取れる内蔵助平にしました。
黒部ダムから4時間ほどで行けるので、今回は扇沢発10時のトロリーバスです。
平日の金曜日扇沢の無料駐車場は余裕で止められるものと思って出かけましたが、ほとんど満車状態です。何とか駐車スペースを見つけて駐車することができました。
15分ほどトロリーバスに乗って黒部ダム駅に着き、勝手知ったる旧日電歩道への遊歩道を下って行きます。
ダム下の監視人から「気を付けて」と声かけられ、黒部川にかかる仮設の橋を渡り毎秒10トンの観光放流のダムを見上げました。
今日は寝袋も入っているので60リットルのデカザックですが、17キロほどの重量です。
以前は余裕で担げましたが、今は15キロを超えると重さが気になります。
黒部川左岸の旧日電歩道を1時間ほど歩いて内蔵助谷出合です。
ダムからの毎秒10トンの放水と内蔵助谷の水が合わさって、黒部川は豪快に流れ下って行きます。
内蔵助出合で昼食休憩の後、内蔵助谷に入って行きます。10日前に歩いたところですから、時間配分も休憩場所も分かるので30分に一度ザックを下ろしてゆっくりと登って行きます。
内蔵助谷、昨日の雨水を集めて前回よりは水量も多いです。
対岸の大タテガビンにも目をやる時間もあるというものです。ここを登るクライマーは少ないようです。
30分おきの休憩を3回取って、内蔵助谷出合から2時間少々で内蔵助平に登り着きました。内蔵助谷出合からは標高差400m、ここは標高1700m地点です。
午後3時過ぎには真砂岳と真砂沢ロッジへの分岐の草地にテントを張り終えました。
熊の恐怖はありますが、とても静かな場所でゆっくり休めそうです。持ち上げたビールを沢水で冷やし、3合ほどの日本酒を飲みながら日が暮れるのを待ちました。コンビニの弁当の夕食を摂った後はシュラフに潜り込みました。寒さ対策で長袖の下着とタイツを穿いたので寒さは気になりませんでした。
「行動時間」
扇沢駅10:00~トロリーバス~黒部ダム駅10:20~ダム下10:45/11:00~内蔵助谷出合11:55/12:20~内蔵助平14:40
<二日目>
前夜は月明かりでテント内はヘッディンが必要ないほどの明るさで、内蔵助平は風もなく快適な一夜ではありました。夜明けの冷気で4時過ぎには起きて、お餅入りのラーメンを作って腹ごしらえし、5時15分にアタックザックを担ぎ、手には草刈り鎌持って内蔵助平を出ました。
ここも勝手知ったる道で、白い巨石累々の涸れ沢を行きます。前回は重荷を背負っていたので2時間かかったハシゴ谷乗越には1時間半ほどで到着しました。
展望地で朝日に輝く剱岳を仰ぎます。
コチラは富士ノ折立方面です。
朝露が消えていないので雨合羽のズボンを穿き、上着も雨合羽に着替えました。
そしてやおら藪山に突入です。この先ほとんど藪山で写真を撮る暇もありません。
10日前に敗退した2100m小ピークには1時間少々で登り着きました。前回は道を失うこと度々で藪と格闘しながら2時間近くかかっていたので、少し開けた場所で腰を下ろし、この先も時間が読めて一安心です。
ここから山頂稜線まで1時間半、稜線から山頂まで1時間と云う読みです。ところがどっこい・・・。
2100mピークからは少し高度を下げて尾根を忠実に辿って行きます。薄い踏み跡はありますが、それが正規ルートのものか判断できません。時々現れる赤布も気休め程度です。
熊笹の海の中ですから見通しも利きません。尾根上のシラビソやダケカンバの樹を目指してひたすら藪漕ぎです。藪漕ぎというより藪潜りですね。笹藪の下にケモノ道か沢状の跡を追って高度を上げて行きます。そして道を失い何度か行きつ戻りつを繰り返し、1時間半の予定を大きくオーバーして、山頂稜線には2時間以上かかって登り着きました。下山時の下降ポイントをしっかり見定めて山頂稜線を行きます。山頂稜線上にも踏み跡は殆どありませんが、尾根を外さないように進むと人が歩いた跡が時々現れてほっと一安心です。藪漕ぎ登山の際は「人間の勘はそれほど変わるものではないな」といつも思います。
やがて二重山稜のような場所に来ると草地が現れました。約100mほど快適に歩ける場所です。
草地を抜けて再び山頂稜線に登りあげるとまたまた笹藪地獄です。この頃になると疲労で心が折れそうになりますが、「とにかく正午まで前進をしよう」と心に決めました。
そしてようやくネットで見た山頂付近の展望が開けてきました。
この景色を見て稜線の藪を嫌って草地に下りましたが、急坂で膝丈の笹を掴みながらの前進は不可能でした。已む無く稜線に登りかえして樹林の中を行きます。そしてようやく黒部別山山頂と特定できる場所に近付きました。
尾根から草地に下ると最近歩いたものと思われる踏み跡がありました。ここは踏み跡などなくてもルンルン気分で歩けます。枯れて白骨化した巨木が黒部別山の格好の山頂標識で、遠くから見ると人工構造物のように見えました。
内蔵助平から6時間半、ハシゴ谷乗越からは4時間半かかって正午前に黒部別山山頂に登り着きました。山頂標識もなく三角点も草叢の中で、今は三角点は無い山頂になっています。草叢にある大きな石が山頂と言ってよいでしょう。残雪期にはそれほど苦労しなくても登れる黒部別山、無雪期にはどれほどの人が登っているのでしょうか。笹藪地獄を突破して登り着いた自分が少し誇らしく思えるのでした。
シラビソの木が少し邪魔になって剱岳はすっきりとは見えません。
大きな石の場所から3mほど草地を駆け上がると白馬岳からの後立山連峰の展望が開けていました。
五竜岳・鹿島槍ヶ岳です。
鹿島槍ヶ岳・爺ヶ岳・岩小屋沢岳方面です。
針ノ木岳方面の右後方は野口五郎岳です。
剣岳ここからもすっきりとした姿が見れません。
池平山も樹林に隠れていました。
大きな石に腰を下ろして昼食休憩です。帰りの時間も気になるとゆっくりとはしていられません。30分ほどの滞頂で12時20分に山頂を後にしました。
下山も藪漕ぎは変わりありません。山頂稜線の下降点ではスマホに入れたGeographicaのGPSアプリで何度も確認して尾根を下りました。笹藪は下るときのほうが道迷いのリスクが高まりますね。間違えたと思ったらすぐに戻ることです。何度か登りかえしをしながら何とか見覚えのある2100m小ピークに下ると一安心です。
疲労もピークに達していてこの先も急ぐことはできませんでしたが、「まあ無事に下山できればいいや」の気分です。登りに4時間半以上かかったハシゴ谷乗越には3時間半かかって無事下山です。
朝7時過ぎに入山して15:50の下山ですから、ハシゴ谷乗越から休憩も含め8時間半の黒部別山往復でした。ヤマレコの藪山キング「tyojinbo」氏は4時間半で往復したという報告がありましたが、とても真似できない行動だと思いました。「世の中には上には上がいるもんだ」
ハシゴ谷乗越で一息入れた後は涸れたゴーロ沢をゆっくりと内蔵助平に戻ります。もう急ぐ足もなく、急ぐ気力もありません。惰性で歩いて1時間半ほどかかって17時15分内蔵助平のテントに戻りました。
早速沢水でビールを冷やし、25度の焼酎をお湯割りにしてささやかながら登頂祝をしました。
<3日目>
今日は黒部ダムまで下るだけです。
ゆっくり起きてと思っていたのですが明るくなると寝てはいられません。6時前には粗末な朝食を摂って、テントを撤収すると7時過ぎには内蔵助平を後にすることができました。
幕営2泊の内蔵助平私の登山人生でも思い出に残る場所となりました。
内蔵助谷に架かる橋を渡って真砂岳にお別れです。
内蔵助谷の豪快な水音を聞きながらゆっくりと下ります。
前方には黒部川対岸に特異な岩峰が見えて、黒部峡谷のど真ん中にいるという実感がわきます。
これは丸山東壁です。登山道に被さるようで恐怖を感じます。
この下を下る途中トレラン姿の若者が、真砂岳に登って立山まで縦走、田んぼ平から黒部ダムにワンデイで下ると云って風のごとく登って行きました。
内蔵助谷出合には2時間以上かけて下りました。出合で大休止して旧日電歩道を黒部ダム下に向かいます。昨日の疲れも抜けきらないのかペースが上がりませんが、岩場にザックを預けながら何度か休憩しダム下流の橋を渡りました。
更に黒部ダム駅までの標高差180mを歩数数えながら登って行きます。
内蔵助平から4時間も掛かってホウホウの態で黒部ダム駅に戻ってきました。
ダム駅出口から見る立山雄山・大汝山方面です。
コチラは歩いてきた方を振り返ります。丸山がすくっと聳えています。
「行動時間」
内蔵助平7:15~内蔵助谷出合9:25/9:35~黒部ダム下11:50~黒部ダム駅11:25/11:35~扇沢駅11:50
「草刈りカマ」持参で 道なき道 ところがどっこい・・・・
今回も 「登山道内ない登山」面白かったです。
アプリ 使いこなしてるんですね。えらい!
膝はもういいのですね?!
今週の連休は 台風、だめかなぁ。
やっぱり青空、展望いいと違うものね。
by mama (2017-09-14 18:51)
こんにちは
北海道は朝晩めっきり冷え込むようになりました
大雪は紅葉真っ盛りだと思います
黒部別山乗越、リベンジ登山おめでとうございます。
私は道のある所でもようやく歩いていますから
道なき道の籔漕ぎはとても出来ません、本当に凄い体力です
20日~25日の予定で出掛けて、甲武信岳(21日)、大菩薩嶺(22日)、雲取山(23日)に登る予定です、台風去った後で天気も大丈夫かと期待してますがどうなるかです
osachiさんは18日から2週間アメリカだそうですよ
山の名前聞いてもどこにあるか分かりませ~ん(笑)
by ほろしり (2017-09-15 14:56)
mamaさん
コメントありがとうございます。
作業着着て草刈り鎌手にもって、登山者というより林業作業者ですね。
でも藪山登山これが一番なのです。
GPSアプリ藪山では威力抜群ですよ。ぜひダウンロードして御活用してみてください。
3連休は本当に残念な天気になってしまいました。
登山者や山小屋関係者の悲鳴が聞こえてきますね。
by kamoshika-nagai (2017-09-17 10:24)
>ほろしりさん
コメントありがとうございます。
コチラも秋風が吹いています。
台風一過後には一気に季節がっ進むでしょう。
マイナー12名山ピリカヌプリは来年ぜひ踏みたいと思っています。
歳だから自分には無理だ無理だと思ったら何もできなくなります。
まだまだ出来る、出来るよやれば♪の気分です。
奥秩父・大菩薩の山お付き合いできませんが、お楽しみください。
天気が良いことをお祈りします。
by kamoshika-nagai (2017-09-17 10:31)