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阿智村の松沢山で遭難騒ぎ [登山]

お盆山行3日目は阿智村の里山松沢山です。
日の入峠から往復3時間のコースですが、先行したムスコが屈曲点を直進してしまい尾根の反対側から来た道に迷い込み、はぐれて3時間後に捜索依頼をしました。地元警察、阿智村役場・消防団の出動を得て八方手を尽くしていただきましたが発見されず、翌日も再捜索で捜索隊は解散しました。解散後地元交番で諸々手続き中の17時半過ぎ、山中10時間彷徨いながら何とか里に下りてきたムスコを地元の老婦人により保護されました。

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前夜は平谷村の高嶺パラグライダー基地で車中泊の後、R153寒原トンネル付近から地道に入って6時半には日の入峠に着きました。日の入峠は今年3月末日の入山に登った時に来たことのある場所です。その時は松沢山の存在を知らずに峠から20分で登れる日の入山だけを登りました。
登り1時間半の松沢山、往復3時間で「10時前には戻ってこれるね」と云ってムスコと二人登山道に入りました。ネットで山頂まで登山道が続いていることを調べてきたので、何の心配もない出発です。15分ほど歩いて最初の高見で先行したムスコが登山道に腰を下ろして待っていてくれました。腰痛に加齢で最近めっきり脚力低下した私に比べ、2割ほどは早く歩けるムスコです。給水して「次は7時半に朝食のパンを食べよう」「先に行っても後ろを振り返りお父さんのいるのを確認しながら歩けよ」と声かけて再び登山道を行きます。少し下り勾配を歩いて小さな沢を渡るとアカマツ林の急坂を直登するようになりました。100mほど先の坂の上部にムスコが見え隠れするのがムスコを見た最後でした。

標高差約200mの急登を登りきると小さな尾根に着き、登山道は右に屈曲していました。(未確認ですがこの尾根には反対側からの道が合わさっていてそこに迷い込んだと思われる)その先には薄いながらもしっかりした登山道が続き、ムスコも自分のペースに嵌って先を急いだのだと思いながら、私も休憩もとらず先を急ぎました。(朝食のパンはムスコのザックに入っていたので食べたくても物がない)

緩く快適な登山道はそのうちに膝丈の笹が被さる道となり、再び小さな尾根に出て屈曲しました。そして山頂付近に来ると背丈の熊笹が被さる煩い道となりましたが、登山道を見失うほどの事はありません。

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熊笹の中を20分ほど歩いて山頂とは思えない平坦な松沢山には登山口から1時間40分ほどで登りつきました。山頂標識も三角点も見当たらず、「激藪氏」の登頂テープに松沢山山頂を確認です。
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私もここが山頂とは思えず一旦通り過ぎて50mほど先に下ってGPSで山頂を確認するほどでした。しかしムスコの姿はありません。藪の彼方に何回も大声上げて呼びかけますが返事が有りません。山頂らしくない山頂で標識も三角点も無いので「通り過ぎて極楽峠方面に行ってしまったのかな~」と、どんどん不安が募ってってきます。結局山頂付近で30分ほどは大声上げていたと思います。
その時に山頂の手前100mほどの登山道に三角点を発見しました。
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山頂付近にはムスコがいないことが分かったので下山することにしました。往路を戻りながら何回も大声上げての下山です。「もしかしたら道迷いに気付いて日の入峠に下っているかもしれない」という淡い期待を持ちながら・・・。
6時40分に日の入峠を出て8時20分ころ山頂について下山は10時10分でした。
「ムスコが先に下っているのでは」と云う期待は見事に外れ、いよいよ不安が強くなってきました。車の中で待っているわけにもいかず、空身で登山道に入り20分先の小沢まで登り返しました。沢水を飲んで喉を潤しましたが、「このまま前進を続けると自分が脱水症状か熱中症で倒れるのでは」と云う危険を察知して、再び日の入峠に戻りました。車中に少し残っていた食料と飲料水をザックに入れて3度目の登山度に入りました。10分ほど登り返しましたが、気温上昇と疲労で気力も続かなくなり、このままでは二重遭難になると思い、警察に捜索依頼を決意しました。
110番に電話して飯田警察署に転信して状況報告すると「すぐに阿智村交番の警察官が日の入峠に向かうから待機するように」指示されました。日の入峠に下って木陰で待つこと30分ほどで警察官2名が駆け付けてくれました。「障碍者のムスコ」という事ですぐに事情を分かってくれて親切に案じてくれました。そして30分後には飯田警察署の山岳パトロール隊の2名と同行の屈強な警察官が駆け付けてくれ事情を聴いた後、走るように登山道に入って行ってくれました。交番の警察官は私の身を案じてくれ嬉しいばかりです。「いま、村の消防団に出動依頼したので心配しないでよい」と云ってくれます。
やがて正午過ぎには阿智村村長さんと消防団長さんなど数名が駆け付けてくれ捜索隊の協議です。1時間ほどして消防車3台と消防団員20名ほどが駆け付けてくれ捜索隊編成です。数班に分かれて松沢山の周辺の登山口(下山口)に飛んでくれました。私は「日の入峠に戻るのは時間的にもうないな、山頂を通り過ぎて別の登山口に下山している」と云う思いでした。その後各方面から連絡が入りますが発見できません。村長さんも私を気遣って何度も励ましてくれます。「もしほかの集落に下りて誰かが見つけてくれれば役場に連絡するように防災無線で村内に知らせてある」とも・・・。
結局5時前には捜索終了で各所に散っていた消防団員が戻ってきました。「明日6時半役場に集合し7時半から再捜索」と云う消防団長の指示で解散しました。村長さんのあいさつの後、私も消防団の皆さんに御礼のあいさつをしました。ずーと私と一緒にいてくれた阿智交番の警察官に促され、交番で捜索願の作成するように言われパトカーの後に続きました。
20分ほどで交番に着き飲み物などを勧められた後捜索願を作成しようとしていると、「役場から見つかったらしいという連絡がきた」と云う情報が入り、私はもちろん交番に詰めていた数名の警察官からも笑顔がもれました。待つこと10数分役場の車に乗って顔を真っ黒にして脛にはあざだらけのムスコが「ごめんなさい」と泣き顔で交番に入ってきました。里に下りてきた所を老婦人が見つけ防災無線での知らせで聞いていたので役場に連絡してくれたそうです。私は怒りよりも愛おしさが先に立ちましたが、「怪我はないか、よく頑張ったな。ここにいるお巡りさんや消防団員が捜索してくれたよ、お礼を言いなさい」と諭しました。
警察官がムスコに山中での経緯を聞こうとしてもその能力が無いことが分かり、通り一遍の聞き取りで済ませてくれました。私はその間「身柄請書」を書きました。警察官からは捜索依頼してから一度もお咎めの言葉もなく本当にムスコと私の身を案じてくれる行動で涙が出るほどでした。交番で丁寧に感謝の言葉を述べて車に乗りパトカーの後について阿智村役場に向かいました。
役場では熊谷村長さんはじめ捜索にかかわった消防団長さんなど10数名に方がが笑顔で迎えてくれました。親子で涙声ながらしっかり御礼のあいさつをしました。「また出かけてきてください」の村長さんの言葉に見送られて役場を後にしました。
夕暮れ迫る中飯田市から中央道に入って、今夜の宿として予約してあった伊那市のホテルには20時前には到着しました。(捜索中に事情をお話ししてキャンセルの電話を入れていたのですが、温かく迎えていただきました。)
私は朝から非常食のソイジョイを一つ口にしただけです。ムスコも二人分の朝食のパンとソイジョイだけで沢水の見ながら空腹を我慢して何とか10時間も歩ききりました。深夜まで営業の焼き肉店に入って空腹を満たしました。色々経緯を聞いても確たる話はできないことが分かっているので、本人も後ろを振り返ることなく先に行ってしまったことを反省しているのであまり触れないことにしました。もちろん踏み跡薄い里山に連れてきて同一行動をとらなかった自分にも大きな責任があるものと自覚しています。
ホテルの夜は二人とも興奮から冷めやらず熟睡は出来なかったが朝8時まで布団の中で休んで少しは疲れもとれたというものです。翌朝か9時前に宿を出て付近の小さな山を巡りながら午後日の高いうちに帰宅しました。

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コメント 4

mako

息子さん無事に見つかり本当に良かったですね!!
お父さんの心配している様子がひしひしと伝わってきました。
息子さんは山の中をどの様な気持ちで歩いていたかと思うと・・・。
阿智村の警察の方、役場の方、消防団の方の頼もしさと優しさが
有り難くて感謝ですね!

私も孫達がコロナウィルスで休校の時や夏休みに度々山に連れて
行ってますが
孫達について行かれず要所要所で待って貰っていますので
永井さんのお気持ちが良く理解できます。
無事に息子さんと再会できて本当に良かったですね!!
by mako (2020-08-19 21:35) 

kamoshika_nagai

>makoさん
コメントありがとうございます。
今年の「親子二人連れ登山隊」のお盆山行は恵那山を目指しました。前日神坂峠に下って来た中年登山者が「登りも下りも4時間半もかかった」と云う話を聞いて、今の私では少々無理だなと判断して富士見台と神坂山に変更しました。ムスコは恵那山に登れなかったので、ストレスもあったのかなと思います。私が元気な間だけのムスコの登山ですから、少し無理してもと云う思いまあります。体調復活(期待は薄いですが)したら秋にでも少し高い山に連れて行ってやろうと思っています。
ムスコも帰宅後母親から「お父さんと離れちゃダメ」と叱られて反省しています。
警察官・村長さんの厚意には本当に頭の下がる思いです。今お礼の手紙を書いているところです。
makoさんをお誘いできなくて申し訳ありません。最近は上田市の水沼さん(
by kamoshika_nagai (2020-08-20 08:40) 

kamoshika_nagai

>makoさん
コメント尻切れトンボになってしまいました。
続きは↓の通りです。
最近は上田市の水沼さん(男性)・増田さん(女性)と同世代の方と近場の里山探訪が多くなっています。いつかご一緒できると良いですね。
幌尻岳は登られましたか?水沼さんは一昨年奥新冠ダムから19キロの林道を歩いて登頂しています。
猛暑が続いていますが体調管理に努めてお元気にお過ごしください。

by kamoshika_nagai (2020-08-20 08:53) 

mako

一昨年に新冠ポロシリ山荘まで19kの長い道のりを重いザックを背負って行ったのですが大雨で登れず、北海道で計画した他の山を登ってきました。
昨年リベンジしようと思いましたが5月に自分の不注意で足首にヒビが入りトップシーズンはおとなしくして9月から山登りを再開しました。
今年こそ北海道の残り2座と思っていましたがコロナウィルスで
まだ実行出来ていません。
なかなか思うようにはなりませんね!
息子さんと山登りにスキーにと楽しみですね。これからも
無理をしない様にしながら息子さんと楽しんでくださいね!
by mako (2020-08-20 19:41) 

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